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令和経済最大の課題

 インターネットが誕生したのは1960年代のアメリカだと言われています。東西冷戦下のアメリカで(一部が途切れても運用が可能な)ネットワーク型のタフなコンピューターシステムの開発が始まり、完成したのが「ARPANET」というネットワークだとされています。

 これが1983年に機密指定を解除され民生用に開放され、インターネットの原型となりました。その後、1990年には世界初の商業アクセスプロバイダが開設され、インターネットの民間利用が一気に進んだということです。

 一方、当初は専用回線で結ばれた大学や研究機関(や一部のマニアなど)によって情報交換などに利用されていた日本のインターネットも、1990年代に入ると徐々に企業や一般の人たちにも普及し始めるようになりました。

 さらに、(私たちの世代には懐かしい)OS「Windows95」の発売をきっかけとして1996年に爆発的なヒットとなり、「インターネット」は時代を引っ張るキーワードとして世間を大きく賑わすことになります。

 この時期、NTTをはじめとした各通信事業者によるADSLや光回線の低価格化が始まり、インターネットを利用した情報のやり取りの実用性が一気に加速しました。それは、それまでダイヤルアップ接続の(アナログ通信の)通信速度の遅さに(大変な)ストレスを抱えていた日本のインターネットユーザーの視界が、一気に開けた瞬間でもありました。

 こうして、1990年代後半には、日本においてもインターネットは社会に大きく影響を与える存在となりました。さらに、このころからNTTドコモのiモードサービスを中心とした携帯電話によるインターネット接続サービスが開始され、若者やビジネスマンばかりでなく、一般の人々の間でも、もはやインターネットは「当たり前」の身近な存在となっていきます。

 1996年は日本最大手のポータルサイト「Yahoo! Japan」がサービスを開始し、ニュースは携帯で見るもの、知りたいことは「ネットで検索」が日本人の間に浸透していくことになります。

 さて、こうして振り返ってみると、1989年に始まった「平成」は、まさにインターネット(の普及)と共に歩んできた時代であったと言っても過言ではないかもしれません。

 2007年にはアメリカでアップルのiPhoneが発売され、翌2008年には日本でもソフトバンクが販売を開始。それまではSFの世界にしかなかった無線端末をひとり1台(以上)携帯できるという、夢のような状況が当たり前のものとなったわけです。

 こうして、人々の暮らしや社会そのものを大きく変えてきた「デジタル」と「通信」は、果たして、続く「令和」を生きる人々にどのような影響を与えていくのか。

 4月26日の日本経済新聞のコラム「大機小機」では、『「令和」経済の最大課題』と題する論考記事により、次の時代の見通しと課題を語っています。

 世の変化を予測するのはますます難しくなってきた。しかし、確かなのはデジタル経済の急進展と人工知能(AI)の進化で生活環境が大きく変化することだと、この論考は指摘しています。

 歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ教授は著書「ホモ・デウス」で、重要な疑問は、人知をも超えるAIの登場で仕事がなくなる余剰人員をどうするかにあると書いているということです。

 AIの開発やデジタル産業で膨大な利益をあげる一部の企業家や資本家と、仕事のない大多数の人類という二極化が必然的に生じる。情報経済の中心原理は、利用者が増えれば増えるほど利用者の便益が高まり、利用者がさらに増えるというネットワーク効果にあると記事は説明しています。

 この結果、「勝者総取り」という現象が起きる。実際、現在の米国では、資産上位0.1%層が下位90%と同等の富を所有しており、残りの大多数は臨時雇いなどで不安定な生活を強いられているということです。

 米国ばかりでなく、日本においても就業者の約40%が非正規労働者である事は広く知られています。基本的には米国と同様に技術革新がその背景にある。絶対的貧困層は減っているが、仕事はあっても不安定な相対的貧困層が米国と同様に増えているということです。

 この不安定な中間層への支援制度を、(新しい時代に向けて)早急に確立すべきだというのが記事の主張するところです。

 この場合、財源は日本でも富裕層に依存せざるをえないと記事は言います。逆進性の強い消費税の大幅引き上げは相対的貧困層を追い詰め、人口減少に拍車をかけることにも繋がる。利益構造を整理して、社会の納得の下に適正な負担を求めるシステムが求められているということでしょう。

 AI技術の進展、経済のデジタル化はさらに加速していくだろうというのが、新しい時代の経済活動に関する記事の認識です。

 であればこそ、来るべき「令和」の時代の最大課題はこのままでは増え続けるとみられる相対的貧困層対策であるとする記事の指摘を、私も重く受け止めるところです。






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